災害を知ろう! Part.8 「地震に関する情報について」
南海トラフ大地震に関する情報
南海トラフ大地震は、南海トラフ(駿河湾から日向灘沖にかけてのフィリピン海プレートとアムールプレートの境界)を震源域として、おおよそ90~150年周期で繰り返し発生してきた大規模地震のことです。前回発生した南海トラフ地震は昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年)になりますが、発生から80年近くが経過しており、次の南海トラフ大地震発生の可能性が高まってきています。政府および各担当機関は南海トラフ地震をどのように位置付け、その情報をどのように伝えようとしているのかを見ていきましょう!
1. 南海トラフ大地震の災害的位置づけ
2012年7月に行われた政府内閣府の中央防災会議(会長・内閣総理大臣)で、同ワーキンググループの中間報告において「南海トラフ巨大地震による被害については、超広域にわたる巨大な津波、強い揺れに伴い、西日本を中心に、東日本大震災を超える甚大な人的・物的被害が発生し、我が国全体の国民生活・経済活動に極めて深刻な影響が生じる、まさに国難とも言える巨大災害になるものと想定される。」と報告されました。
2. 過去の南海トラフ大地震の情報
過去に南海トラフで発生した大地震は下記の13回で、江戸時代以前は文献によって明治時代以降は政府の記録によりその年代や規模を推定することができます。
<過去の南海トラフ大地震>
1. 白鳳地震(684年)… 推定規模M8.0~9.0
2. 仁和地震(887年)… 推定規模M8.0~8.5
3. 永長東海地震(1096年)… 推定規模M8.0~8.5
4. 康和南海地震(1099年)… 推定規模M6.4~8.3
5. 正平東海地震(1361年)… 推定規模M8.25~8.5
6. 正平南海地震(1361年)… 推定規模M8.25~8.4
7. 明応地震(1498年)… 推定規模M8.2~8.4
8. 慶長地震(1605年)… 推定規模M7.9~8.0
9. 宝永地震(1707年)… 推定規模M8.9~9.0
10. 安政東海地震(1854年)… 推定規模M8.6
11. 安政南海地震(1854年)… 推定規模M8.7
12. 昭和東海地震(1944年)… 推定規模M8.2
13. 昭和南海地震(1946年)… 推定規模M8.4
震源域は南海トラフを海盆と言われる6つの区域に分けられ、それぞれの地震の震源は海盆を2つ以上にまたがって同時的に、または少し時間(数十時間~数年間)をあけて連続的に発生しています。特に1707年に起きた宝永地震は5つ(※6つという説もある)の海盆を震源域とする同時発生的大地震で、揺れの範囲は約790kmに及び、北海道・東北地方・沖縄を除く日本列島全域で推定震度5~7の強震または激震となりました。
<図で見る南海トラフ大地震>
※地震調査研究推進本部事務局ホームページより引用
3. 現在の情報伝達について
政府機関の中で日頃の防災情報を伝達する官庁である気象庁は、将来起こり得るであろう南海トラフ大地震を予測することは不可能であるという見地に立って、2017年11月より南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会(※1)において「南海トラフ地震に関連する情報」の提供を始めました。
これは情報を「関連解説情報」と「臨時情報」の2つに分けて発信することで平時と非常時双方に臨機応変に対応できるようにしたものと言えます。これにより今まで東海地震の予測を前提とした「大規模地震対策特別措置法」が約40年ぶりに見直されることとなり、この情報を基に各自治体がより現実的な防災対策に取り組めるようになりました。
<2つの情報の形>
1.「南海トラフ地震関連解説情報」とはとは以下の場合に発表される情報になります。
① 観測された異常な現象の調査結果を発表した後の状況の推移等を発表する場合
② 南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会の定例会合における調査結果を発表する場合
※ただし南海トラフ地震臨時情報を発表する場合を除く
※すでに必要な防災対応がとられている際は、調査を開始した旨や調査結果を南海トラフ地震関連解説情報で発表する場合がある
2. 「南海トラフ地震臨時情報」とは以下の場合に発表される情報になります。
① 南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかどうか調査を開始した場合、または調査を継続している場合
② 観測された異常な現象の調査結果を発表する場合
<臨時情報に付記する4つのキーワード>
臨時情報には下記の4つのキーワードを末尾に付記して発表します。
1.(調査中)
① 下記のいずれかにより臨時に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する場合
・ 監視領域内でM6.8以上 の地震が発生
・ 1カ所以上のひずみ計での有意な変化と共に、他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化が観測され、想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合など、ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測
・ その他、想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測される等、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測
2.(巨大地震警戒)
① 想定震源域内のプレート境界において、M8.0以上の地震が発生したと評価した場合
3.(巨大地震注意)
① 監視領域内において、M7.0以上の地震が発生したと評価した場合 ※巨大地震警戒に該当する場合は除く
② 想定震源域内のプレート境界面において、通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合
4.(調査終了)
① (巨大地震警戒)または(巨大地震注意)のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合
(注釈)
※1 … 評価検討会は現在6名の委員(有識者)で構成されており、観測データに異常が現れた場合に南海トラフ地震との関連性を緊急に評価するための臨時会合と、平常時から観測データの状況を把握するために原則毎月1回開催している定例会合があります。また評価検討会には国土地理院、海上保安庁、防災科学技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所などの気象庁以外の政府機関も参画しています。
「南海トラフ地震に関連する情報」へは下記リンク(気象庁ホームページ)よりアクセス可能です。※トップページの4段落目「南海トラフ周辺の地震活動」の項目より各種確認できます。
●気象庁ホームページ(南海トラフ地震について)
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/nteq/index.html